富山の天神講



天神講掛け軸

富山では年末になると床の間に天神様の掛け軸や木彫りの坐像を飾ります。富山県内には、太宰府天満宮や北野天満宮のような大きな天満宮はありません。天神信仰は、大きなお社によって支えられているのではなく、個々の地域や家庭に連綿と受け継がれてきたとみると、北陸の民の信心深さが見て取れて、とても興味深いもの。

なお、本来、天神様というのは菅原道真公とは別の存在です。もともと、天神様は雷をつかさどる農耕の神様。雪深い北陸に暮らす農民たちにとっては、春を待ちわびる気持ちを天神講に託し、五穀豊穣を祈るのが天神講であるともいえます。

お正月の行事のひとつにもなっている

富山では、12月25日から年が明けて1月25日まで、掛け軸を飾ります。それは、天満宮の総本社・北野天満宮で12月25日に終い天神、翌1月25日に初天神を行うから。その一か月間、富山の各家庭で、それぞれの願いを込めて天神様の掛け軸を床の間に飾ります。お正月のお飾りと天神様が並ぶのが富山ならではのお正月の風景です。

掛け軸には色々なデザインがある

天神様を描いた掛け軸には、様々なデザインがあります。一番ポピュラーなのは、黒い宮中着をお召しになって、尺を右手に持ち、黒い冠をかぶり、ちょっと髭を生やしたお姿で楽座(らくざ)をするお姿の天神様。他にも、立ち姿の天神様、牛にまたがったお姿の天神様など色々あります。いずれも厳しさのなかにも慈愛に満ちた表情で見守って下さる天神様が伝統的な日本画の技法で美しく描かれ、さらに日本古来の伝統的技法で表装してあります。







富山の天神講は福井から伝わった!?

日本国内でも天神講の風趣が色濃く残るのが福井と富山と石川の北陸三県です。しかし、福井の天神講は2月25日なのに対して、石川と富山の天神講はお正月。このことから、富山の天神講は、石川(前田家)に由来するという説があります。一方で、福井から富山の薬売り商人を通じて富山に伝わったとする説もあります。

前飾りとお供えも

天神様の掛軸は、ひな人形や五月人形、こいのぼりを扱う専門店で販売されています。日本画家が描いた天神様の掛軸の他、木彫りの座像も。床の間のないご家庭用に額の天神様や人形も用意されています。掛軸は単体なら10万円ぐらいから、お供え道具(お酒、徳利、鏡餅、三方)といった前飾りが付くと15万円ぐらいからが相場のようです。木彫りの場合は20万円ぐらいから。

掛軸の前にお供えするのは、お正月ということもあり、お餅、昆布、みかんの三種類が多いようですが、各地域や家庭によって少しずつ違いがあるようです。鯛など、尾頭付きの魚をお供えすることも。

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