福井の天神講



焼きカレイ

日本国内で最も天神講を熱心に行っているのはどの地域か、ご存じですか?

答えは、なんと福井県。福井県では、男の子が生まれると最初のお正月に母方の実家から天神様の掛け軸を贈ります。お正月には床の間に飾り、1月25日の天神講の日には焼きガレイをお供えし、無病息災と学業成就を祈ります。道真公のお命日(2月25日)ではなく、1月25日が福井の天神講です。

福井独特の習慣、孫渡し

福井には「孫渡し」という、独特の風習があります。赤ちゃんが生まれると母方の実家が衣類やタンス、おもちゃといったベビー用品を大量に贈るというもの。男子の場合、必ず天神様の掛軸が含まれます。男兄弟が多いご家庭では、一家に掛軸が何本もあるということも。天神講にはおじいちゃん、お父さん、息子さん、三つの掛軸を並べて飾るというご家庭もあるようです。地域によっては木彫りの天神様を贈るところもあるとか。ちなみに、掛軸は日本画家が描いた天神様の肖像画を表装したもので、およそ10万円から。市内の専門店で購入できます。







天神様には焼カレイ

結婚式やご法事のときにお膳に並ぶお魚というと何でしょうか?福井では、尾頭付きで丸ごと焼いたカレイが並びます。若狭などで美味しいカレイがよく獲れるからでしょう。お祝いには身の厚い越前産の「赤カレイ」が使われます。1月25日の天神講の前になると、福井市内のスーパーやお魚屋さんの店頭では、ほどよく焼いた大ぶりのカレイが店頭に並び、季節を感じさせてくれます。菅原道真がカレイを好きだったと言う説もあるようです。

 

ルーツは松平春嶽

福井でなぜこんなにも天神講が浸透したのか?そのルーツは、幕末の福井藩主、松平春嶽にあります。将軍徳川家慶の従兄弟にあたり、とても優れた藩主で、幕末四賢侯の一人として有名な名君です。

春嶽は民に学業を奨励し、その精神的支柱に天神さまをかかげました。寺子屋には必ず道真公の掛軸をかけ、学問の神、手習いの神として毎月25日の天神講に拝むように命じました。さらに、城下に住んでいた画家たちに天神様の絵を描かせ、表装して販売させました。当時、福井城下には150人もの日本画家がいたという説もあり、彼らをフル稼働させることで庶民にも手の届く価格で掛け軸が販売されるようになって、天神講が広まったと言われます。

福井では天神講の他にも無病息災や五穀豊穣を祈る伝統情事が色濃く残っています。1月の「戸祝い」、「綱引き」、2月の「勝山左義長」、3月の「お水送り」、「すり鉢やいと」など、古くからの伝統行事が今も息づいています。

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